先日、『次課・長州の力旅』という番組に出演し、横浜と川崎のエスカレーターを案内させていただきました。
放送後、Twitterでエゴサーチしていたところ、視聴者の方で「全部知ってるエスカレーターだったけど、もしかして自分はエスカレーターマニアなのか」と困惑(?)されている方がいらっしゃいまして。たしかに、元町・中華街駅、川崎モアーズ、横浜ランドマークプラザ、というチョイスは、私も相当初期の頃にチェックした王道中の王道でしたので、マニアック度が足りなかったかなと反省しました(負けず嫌い)。
そこで今回は、東京の中でも「これは知らなかった」と言われるであろうエスカレーター名所として、エスカレーターマニアの面目躍如とするならどこだろう(負けず嫌い)という視点で、ちょっとまとめを作ってみた次第です。
※ちなみに、番組でご紹介したのはこちらの3箇所。出演者の方からはランドマークプラザさえ、「いや、言われなければ曲がってることにも気づかなかったかも」というお言葉もいただきましたので、件の視聴者の方はエスカレーターマニアの素質充分なことはまず間違いないので安心していただきたいと思います。
マニアックレベル初級
そこそこ派手で、一般的にもいわゆる「映える」エスカレーターだけれども、場所が場所だけにあまり知られていないであろうエスカレーターです。
有楽町マリオン
上階の映画館フロアを結ぶエスカレーターで、全面鏡張りの空間で無限エスカレーターが楽しめることがマニアの中では常識、となっているのですが、案外、映画目当ての方はエレベーターで直行することが多く、こんな夢の空間が眼前にあることに気づかれなかったりする場所です。
LIVIN OZ 大泉
日本のポンピドゥーセンターとして崇めている場所ですが、大泉学園という練馬区の住宅街、しかも駅からさらにバスで数分かかるという「なんでこんな場所に」と思わずにはいられない土地に突如現れるショッピングモールです。しかも中身は西友とかドトールとか。渋い。
ちなみに本家ポンピドゥーはこれ。似てるよね。
新歌舞伎座
隈研吾さんによる特注色、「歌舞伎赤」で彩られたエスカレーターです。歌舞伎の正規チケットを持っていないとみられない場所にあるので(幕見席チケットでは入れない)、見るために1万円ぐらいかかります。しかしこの「歌舞伎赤」、手すりだけかと思いきやステップや床板にまで用いられているという超絶カスタマイズ品なんですよね。エスカレーターマニアなら1度は行くべきかと。こんなことできるのかよー三菱先生さすがかよーという気持ちになります。
隈研吾先生も、番組でご紹介した元町・中華街駅の伊東豊雄先生同様、親エスカレーター派としてマークしている建築家のひとりです(他には原広司さん、リチャード・ロジャースさんなど)。
地元北陸のキラリも素敵でしたよ。
マニアックレベル中級
マニア以外はとりたてて注目しないであろうが、わかりやすくめちゃくちゃ珍しい、というタイプのエスカレーターです。
銀座ファイブ
オーチス・エレベーター製の丸ボディ、しかも部分照明型という、世にも珍しいエスカレーターが残っている貴重な施設です。いかにもマニアっぽい説明ですみませんがついてきてください。調査不足なだけかもですけど、現状、日本でオーチスの丸ボディってここでしか見れないかも。海外は丸ボディ自体が少ない(日本メーカー独特の形状のため)ので、ここにしかもうないのかも?
この近くにあった阪急銀座モザイクにもとても可愛らしいのがあったんですが建て替えでなくなってしまい、悲嘆に暮れていたところ、すぐ近所で再び発見して「こんなところに……!」と思いました。めちゃくちゃ一等地にあるんですが、雰囲気としては巣鴨、という感じで、都心に残る異空間のひとつですね。
モザイクにあった丸ボディはこれ。
関係ないですが、この近所には異空間が色々あって楽しいです。
東宝ツインタワービル
マツコの知らなすぎる世界で紹介して以降、エスカレーターを見るために名鉄百貨店本店を訪れる方もいると聞いて、ちょっと嬉しい気持ちなのですが、日本に3基しかないうちの1基がここにあります。
これも日比谷、有楽町界隈。上のと合わせて思うのですが、この界隈も名古屋同様、ちょっと時空が歪んでる疑惑ありますね。
ちなみに名古屋はここ。日比谷のは1人乗りの幅でよりスタイリッシュです。
大丸ピーコック下北沢
思わず「え…!」とおののくぐらい古いタイプのエスカレーターが残っています。この写真の撮り方でわかるように、私、撮影時点で気づいていないのですがこれ、床板に「日立エスカレーン」の文字があるんです。日立がスーパーなどのより小規模な商業施設向けに作った、規格型エスカレーターのひとつですね。ですね、と言われても困るかもしれませんが、丸ボディ同様、日本のエスカレーターの中では相当レアな一品です。ステッカーもかなりレアな種類ばっかり貼ってあって素敵。
日立エスカレーンに付いてはこちらが詳しいです。
特別企画4 日立のエスカレーター"エスカレーン"の謎を追え!・前編
ちなみに、神奈川県では上記記事執筆者のMACLORD氏とともにレトロなスーパーを中心にエスカレーター巡りをしたことがあり、レトロ系マニアックがお好みの方はこちらもどうぞ。日立エスカレーン再び登場します。
レトロ系は私よりも、MACLORD氏やJP-Super.comさんの方がよほどお詳しいのでこちらもどうぞ。
JP-Super.com (@jp_super) | Twitter
マニアックレベル上級
「これの何がすごいの?」と言われても説明がしにくいのだけれども、間違いなくエスカレーター名所である、と感じずにいられない場所です。
銀座7丁目歩道橋
エスカレーターにハマった理由を、「上京してきて、日常にすごくたくさんエスカレーターがあってびっくりしたから」と答えると、どんな田舎から来た子なのかな?と思われることがあるのですが(金沢市ですよ)、歩道橋にエスカレーター、は間違いなく、都会にしかない風景です。昭和通りの交差点を蛸の足のように結ぶ歩道橋は、階段を伴わない独立タイプのエスカレーターがとてもレトロフューチャー。
ちなみに、庵野監督も第3新東京市の「今と地続きの未来感」を表現するためにエスカレーターを非常に巧みに使います。
羽田空港第一ターミナル
羽田空港は、第二ターミナルのわかりやすくワクワクするロングエスカレーターも素敵なんですが、第一ターミナルのやや無骨で機能的、でも人を圧倒するスケールの吹き抜け空間にいつもゾクゾクします。ちょっと香港っぽいというか。この写真だとわかりにくいのですが、左右にシンメトリーにこの反対側にも同じエスカレーターが設置されています。長らく新幹線のなかった北陸勢としては、東京の玄関口はいつも羽田だったので、この風景が「東京」として心に深く刷り込まれているような気もします。
ちなみにこちらが第二ターミナル。シンプルにわかりやすくかっこいい。
LABI AKIHABARA パソコン館
秋葉原駅前の「エスカレータービル」と呼んでいるビル。ひとつひとつのエスカレーターは、形状や長さもいたって普通、つけられ方も至極シンプルなんだけど、「こういう方法があったか」と思わずにいられない、ワクワク感がたまりません。ちなみに一番上の部分はエスカレーターではなく階段です。
晴海トリトンスクエア
トリトンスクエアは、何だろう。このぐらいの空間そんなに珍しくもないんじゃない、と思っていた時もあったけど、1度エスカレーターから中二階で降りて、わざわざこの円形の踊り場に回り込んでさらに高みへと吸い込まれていく。何度見返しても、なかなか大胆な設計になっていて、いつも惚れ惚れとします。これを作った人はエスカレーターが好きに違いない、と初見の感想に書いてありますが、今でもそう思います。
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いかがでしたでしょうか(なんちゃって)。
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スタンダードにかっこいいエスカレーターのまとめはこちらに。