別冊東京エスカレーター09号「大阪」特集より、太陽の塔に関するコラムを全文掲載してみます。
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今年3月から、48年ぶりとなる太陽の塔の内部公開がスタートした。
見学は予約制で、小グループに分かれて塔内部の階段を高さ30メートルまでのぼっていく。メインの展示物は、がんばって再現された岡本太郎氏の作品「生命の樹」で、カラフルに枝分かれした巨大な樹に、生命の進化に合わせて下から順番にたくさんの生き物の模型がつけられており、なるほど大迫力。
各グループ1名ずつ係の方がついて解説してくれるのだけど、最上フロア、腕のある部分まで上ってきたところで、「この腕の中には、当時はエスカレーターがついていました」と聞いて、めちゃくちゃ驚いてしまった。恥ずかしながら、ぜんぜん知らなかったのだ。
当時、万博のシンボルゾーンには、丹下健三氏の設計した大屋根があり、その大屋根を貫く太陽の塔は、現在階段となっている部分も当時はエスカレーターで、腕を通って空中展示へと進む動線の役割を果たしていたのだという。というか、大屋根の設計が先にあり、太陽の塔はそれに登るための「エスカレーター塔」として企画されたということなのだ。
それを聞いたら、エスカレーターマニアとしては太陽の塔それ自体がエスカレーターにしか見えなくなってきた。あの腕の形、エスカレーターのためだったのか。
現在、塔内部にはエスカレーターは残っておらず、万博記念公園にもエスカレーターはないのだが、公園内にあるEXPO ‘70パビリオンで当時の様子を記録した映像や模型をみると、そこいらじゅうエスカレーターだらけであり、大阪万博はエスカレーターの祭典と言ってもいいほどなのではないかと思ってしまう(それは言いすぎ)。
シンボルゾーンの入り口、太陽の塔の正面には4基並列のエスカレーターがあり、そこから太陽の塔内部のエスカレーターをのぼって、大屋根の空中展示へと進み、そして今度はロングエスカレーターで地上へと戻ってくる。まさに、「娯楽と実用の併用機関」エスカレーターの面目躍如とでもいうべき大空間だったのだ。
こちらは、日立グループ館のパンフレット。パスポートを模したサイズ、デザインになっていて、パビリオンの内容をイラストで説明している。
丸い円盤の宇宙船のような建物には、まず「40メートル継ぎ目なし空中エスカレータ」でのぼっていく。ホールに到着したら、コックピットに座り、シミュレート・トラベルが楽しめる。そして、「260人乗りの2階建円筒形エレベータ」でおりてくるのだ。素敵だなぁ。梅田スカイビルの空中エスカレーターが長さ45メートルなので、それとほぼ同じものが当時ついていたということになる(ちなみに現在日本で一番長いニューレオマワールドのマジックストローは全長96メートルで倍以上)。
巻末には、万博全体の地図と、各展示地区の出展国、出展企業の名前が書かれているのだが、もとの持ち主さんがマーカーで線を引いて、おそらく行ったところをチェックした跡があり、とてもほっこりした。
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