前々から大注目している羽田D滑走路。2月某日、土木学会と『社会科見学に行こう!』の小島健一さんらによって羽田D滑走路の見学会が催されるようである、しかし定員少なめ、という噂を聞きつけ、どうしても行きたかったのでこっそり申し込み、こっそり行ってきた。
こっそりのつもりだったのだが、土曜の朝9時というすばらしい集合時間に品川まで赴いてみれば、高架橋脚ファンクラブの会員の皆様6名くらいに遭遇。いやぁどうもどうも、そりゃきますよねー。いやきょうはわたしはどちらかというと飛行機オタクとして来てまして...とか、そこはもう気心しれた挨拶をかわすわけだが。
この先待ち受けていたものに、ファンクラブ会員一同、ぜんいんで一気に腰を抜かす事態に!!
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この日のGPSログ。海の上。
- 羽田D滑走路ってなーに?
というのはクロスケさん(高架橋脚ファンクラブ会員No.32!!)による当日のライブレポートに詳しい。
白状するとわたし、この日まで知らなかったのだが、D滑走路は西側が桟橋構造、東側が埋め立て構造という超特殊な工法によってつくられている。
というのも、D滑走路は既存のB滑走路と平行になるようにつくられているのだが、これ以上東に延びると東京湾の第一航路をふさいでしまって無理。かといって西に延びると多摩川河口をふさぐ。そこで、西に延びて多摩川の流れを遮らないよう、西側半分を桟橋構造にすることになったのだ。すごいでしょう。
後半のトークイベント時のスライドより。平面での制限もさることながら、「大型船の運航」と「飛行機の離着陸」が衝突しないようにという高さでの制限なんかもあり、もう、しっちゃかめっちゃか。文系ならここで投げ出す。いわば土木界の微分積分だ。っていうたとえが完全に文系だ。
いままでわたしが大喜びで観に行っていたのは、西側の桟橋構造部分。これは、現在の羽田空港の最南端にある「D滑走路展望台」からみたところ。
ジャケットだけでも超デカくて(作業員の方いわく、『ひとつひとつがちょっとしたビルぐらい』)、千葉で作られたりしていた。これは、千葉港のあすなろ号に乗った時みたやつ。
そして3回目の遭遇は偶然にもこの見学会の前の週。多摩川河口クルーズに参加したときに一番西側の側面を観て、「近い!」とひとりで大騒ぎ。
近い!かっこいい!!
- まずは全体像
ではおちついてまずは全体像からみていこう。
D滑走路展望台で本日の見学コースの説明を受け、再びバスに乗り込み、いざ、既存滑走路とのつなぎ部分、連絡誘導路を渡る。
飛行機が渡る橋だーー!と一同ものすごく興奮。特に国道熱中人であられるところの松波さん(高架橋脚ファンクラブ会員No.30!!)の切るシャッター音の鳴りやまななさがすごい。最初からぜんぜん落ち着いてない。
渡った先でバスを降りると、こんなすばらしい見学台が。
うおおー広いぜ!
超でっかいクレーンの奥に
埋め立て部分が見える。こうしてみると、桟橋部分との構造、質感の違いがまるわかりで、この先一生私はD滑走路で離着陸するたびに、「あ、いま構造境界を踏み越えました!」とひとり実況することになるであろう。
- 橋脚たちの聖地出現
見学台でぐるっとひとまわりすると、先ほど渡ってきた連絡誘導路部分。
この連絡誘導路の橋脚も、半分ステンレスですごくかっこいいナァなんて思っていたのだが
なんと!あろうことか!そこをくだるんですか!!いいんですか!!なんか手すりとかなくてすごい場所ですけど!
降りた先に広がっていたのは、橋脚たちの聖地。
(クリックで拡大しますがパノラマのつなぎ目に無理があります)
あまりの驚きに橋脚ファンクラブ会員一同、「船を出そう、船を。」だとか、「ここに住みたい。」だとか、むちゃくちゃな絶賛の嵐。
ブログでこんなこと書く人ってほんとうに意地悪、きらい。と常々思っていることを書くが、あのすごさは、行ってみないとわからない。主催側の方からの「見学会、完成前にもう一度、できたらいいね」というお言葉をキャッチしたし、連絡誘導路は一般の船舶が行き来できる高さにしてあると聞いたので、またの機会には皆で行こうではないですか。いざとなったら高架橋脚ファンクラブで船をチャーターするぞ。
死ぬまでに一度はみたほうがいい風景。文句なしの聖地に認定。
- 見学会はつづく
高架橋脚ファンクラブ的には既に200%大満足の見学会だが、バスに乗り込んで、つづいては埋め立て部分の東の先端へ。
荒涼の大地だが、海の上。
繰り返すが、海の上だ。この大地をつくるためには毎日1万台のトラックが千葉から土を持ってきている計算になるという。そして千葉のトラック総台数は7,000台だという。どゆこと。
だばだばだばー
あの赤い素敵な誘導灯のトラスを支える橋脚たちもいた
- 後半は、土木苦労話、ぶっちゃけ話
後半は会場をお台場の東京カルチャーカルチャーにうつしてのトークショー。いろんな超興味深いスライドが出てきて、そのすべてに苦労話がくっついていて、なんかもう、すごいです。
なんかみたことある吉田組のフローティングクレーン。ただし形が変。これはなんと、今回の全部で198基の桟橋ジャケット(繰り返すがこれひとつでビルの高さ)をつりさげる用にカスタマイズされたものなのだそうだ。で、他に特に使い道がないので、またもとに戻すしかないかも、なんだそうだ。うひゃー。
こちらは、埋立部の地盤改良工事の様子。地盤改良は地味だがそれだけで1年間かかる重要な行程。なにせ今回は、埋立部と桟橋部という、まったく違う構造をつなげるので、完成後にちょっと地盤沈下しようもんでも大変なこと。だから、1年かけて、あらかじめ地盤を沈下させておくんだそうだ(注・文系によるざっくりとしたレポートです)。
そしてもうひとつ。「ひえー」とおもったのが、既に稼働している空港の周りでの作業のための苦労。飛行機が飛ぶにあたって、こんなでっかいクレーンが周りをうろちょろしているわけにいかないため、なんとクレーン船が活躍できるのは深夜のみ!ひとしきり作業をしたあと、また待機水域までひきあげなくてはならないんだそうだ。毎日。
...あのね、東京港臨海大橋のあのクレーンのでかさを目撃してる私からして、こんな船がこんないっぱい一度に「解散!」てことになったら、どれだけ大変かってね...むしろ想像が全然つかないくらいですよ!
わかりやすいところでいうと、ほんとは飛行機飛ばない時間なのに某政府要人のフライトスケジュールが変更になって、さぁ船どうする...ていう事態が生じたり、ハプニングの絶えない現場。
そこで私がいちばん「はっ!」としたのは、説明してくださった現場の方の、
「トラブルがあってこそ、仕事はたのしいんですよ!」
というひとこと。
私がトラブル連続で疲弊している状態で上司にいわれたりしたら「きれいごと」とも捉えてしまいかねないひとことなんだが、ここまでの超絶苦労を、おもしろおかしく興奮気味で語ってこられた作業員の方から聞いて、目からウロコ、の状態であった。
お金じゃ絶対に解決できないトラブルの連続を乗り越えて、でもはっきりと決まっているゴールに向かって確実に全員一丸となって、そしてこの先100年使い続けるものを作る。私の今の気楽な仕事とは完全にかけ離れた世界だが、そんな仕事だからこそ、得られるものの大きさっていうものも、きっと私には想像つかないくらいなんだと思う。
若者たちよ。土木どうだい。
完成を楽しみにしてます!