ハトヤに泊まる
11月の3連休、125ccの原付、トリシティで伊豆に行くことにした。
しかし、連休の伊豆となると、道路の渋滞が心配だ。気ままなリモートワーカーなので、それなら金曜出発にしようという予定を立てて、伊東のあたりで手ごろな宿などないかと探したのだが、これが、ない。連休前日の金曜日から3連休の間じゅう、箱根・熱海・伊豆のホテルや旅館は、1人1万円以下で泊まれるところなどなかった(謎ペンションを除く)。
連休中はキャンプすることにしているのでいいとして、金曜の宿をどうしようか、どうせ1万円以上出すのなら、ハトヤはどうかと考える。
ところで、ハトヤというとみんな「4126」と反応してくれるが、日本海側出身の私はくだんのCMを見たことがない。ハトヤに泊まるというアイデアは、DPZの大山さんの記事を見てのものだ。
もう13年も前の記事だ。「いいなぁ行ってみたいなぁ、一人じゃ無理かぁ」という気持ちを13年もあたためていたわけだ。
こういう、「観光ホテルっていいよね」という気持ちはずっと持っていて、甲斐みのりさんの本も持っているし、熱海のホテルニューアカオで行われたイベントには喜び勇んで赴いたし、エスカレーター目当てだが和歌山のホテル浦島も行ったことがある。
ホテル浦島には、謎の「シングルルーム」があって、お盆の真っただ中でも一人ならお得に泊まることができた。ハトヤにもそういうの無いかと期待したが特になく、るるぶトラベルで「和室10畳セルフプラン」というやつを1万5千円で予約した。

伊東の市街地から、ちょっとわかりにくい細い坂道を登って行った場所にあるのだが、坂道の登り口にもかわいい「ハトヤ」の看板が出ている。








ハ・ト・ヤ!!!
ちなみに、観光ホテルは独特の趣を残しながらも令和に対応するためがんばっているところも多いが、ハトヤは何もしなくてもがんがんお客さんが来ていた頃そのままという印象であった。いや、むしろその巨大な図体を何とか維持するためにがんばっているというか。フロントの立派なカウンターの横に置いてある安い長テーブルで記帳させられるとか、その記帳台に置いてあるペンがめちゃくちゃ安っぽいとか、部屋のドアの鍵をあけるのにめちゃくちゃコツがいるとか、部屋にWiFiないとか、渡り廊下の電気が明るい時間は1つおきにしか点かないとか、朝食バイキングのコップが紙コップとか、これはセルフプランだからなのだが自分で布団を敷く必要があるし……正直、素泊まりで1.5万円だす宿としてはどうかというところが多い。ホテル浦島もそういうところはありつつ、1泊では入りきれないほどの数の温泉があったり、夕食でまぐろ解体ショーやったりして盛り上げていたが、ハトヤはそうでもない。でも「よくぞコロナ禍を耐え抜いてくれた……!」という感謝しかないので、そういう気持ちを持てる人はぜひ泊まりに行くとよいと思う。




THE旅館な趣の10畳和室。
少し左側に目をやれば、海も望めるナイスビューのお部屋だったのだが、なにしろ、「ハトヤビュー」なことにテンションを上げる。

いいね!!


飾られている置物がハト!!


ハトヤサブレ!!

トイレのスリッパもめちゃくちゃかわいい。

ちなみに、こういう細部のかわいらしいものは、ロビーに置いてある「ハトヤガチャ」でゲットできる。スリッパ出すために結構散財してしまった。





渡り廊下は今なお完璧なたたずまい。





旧シアター会場(現朝食会場)は圧巻。



エスカレーターは上りが丸ボディで下りが薄型であった。後付けとも思えないのだがどうしてこうなったのだろう。



いろいろと趣向の凝らされた照明がいたるところについている。

浴衣にもハト。

朝食会場の醤油さしにもハト。いろんなハトがいる。

ロビーの片隅になにげなく置いてあった旗のハト。このハトが一番かわいい。
夜になるとこの日は大雨だったのだが、よりスペイシーさが増してよかった。






大室山
翌日は、気持ちがよい秋晴れの1日。
伊豆は何度か50ccのカブでウロウロしたことがあるが、まだ行ったことのないジオスポットをまわることにする。ホテルも旅館もほとんど空きのない3連休の伊豆、「富士山が見える場所にはどこにでもインバウンドが来ている」という感想だった。大室山ですれ違いざまのZ世代が「デジカメ持ってるやつ、全員中国人w」と嗤っていたが、ただの地理好きもまぁまぁいるぞ。

飛行機から見えるたびにいつもうれしい気持ちになっていた大室山にリフトで登る。



Z世代が言うとおり、インバウンド5割強という感じなのだが、すごくきれいに富士山が見えるのだな。

でも地理好きが高倍率のデジカメを持っているのは、小室山とか伊豆東部火山群を撮るためだぞZ世代よ。

伊豆諸島もよく見える



城ヶ埼海岸
つづいて城ヶ埼海岸へ。
こういう「THE観光地」の場合、有料の駐車場にバイクはとめられなくて右往左往してしまうことがあるのだが、伊豆の場合は、ゲートの脇からバイクはするりと入ってとめることができる(無料)ようになっていることが多くて親切だった。




柱状節理かっこいい。



けっこう先のほうまで歩いていけるようになっていて、ジオジオしくてよかった。
一度スルーしてしまった灯台にも、「海岸と大室山が一望できる」という説明を見て、戻って登りにいく。


外には出られないのでガラス越しだが、たしかによく見えた。
そして、ジオパークのサイトを見ていて気になったこの「魚見小屋」。



え、めちゃくちゃかっこよくない?良いものを見た。




ネーミングがとてもよい「いがいが根」。とても溶岩。

城ヶ埼海岸には他にもたくさんジオスポットがあるが、あとは歩いて数時間……というところが多かったので今回はスルー。これは伊豆高原駅のジオテラス伊東に展示されていた「かんのん浜ポットポール」。ガイドさんと一緒でないと観に行けないそうだが、元気なうちに行ってみたいものである。
細野高原
つづいて、10/31からちょうど「すすきフェスタ」が始まった細野高原へ。
いちばん短いコースでさくっとまわったのだが、伊豆の秋をのんびり満喫できるよい場所だった。





宇久須キャンプ場
雨予報がすっかりなくなって喜んでいた三連休だったのだが、かわりにめちゃくちゃ風が強い。海岸沿いのキャンプ場を予約していたら「風が強いので用心するように」とメールが来ていておびえていたのだが、なんとかなった。


海水浴場に併設されたキャンプ場で、シーズンオフは3000円ぐらいでお得に泊まれる。
黄金崎
翌日、夕陽スポットとして有名な黄金崎へ。前日、風におびえすぎてスルーしてしまったのだが本当は夕陽の時間に行くべきである。

馬ロックはめちゃくちゃ馬。

硫黄の産地だったということで、岩肌も要注目。

今日も富士山が綺麗。
浮島海岸
マグマが通ったあとである「岩脈」が見えるという浮島海岸へ。
以前、「岩脈」を観に行ったときは、カヤックを漕いで苦労して行ったので、今回もけっこう歩くことになるだろうと気合を入れて行ったのだが、駐車場から歩いて1分ぐらいで展望できる、アクセス便利な「岩脈」だった。


え、もうあるじゃん。


こちらはすごく苦労して観に行った岩脈「龍崎の蛇くだり」
一色の枕状溶岩
伊豆が海の底にあったことの証でもある「枕状溶岩」。
「ジオ菓子」にもなっていて、一度見てみたかったやつ。「どれのことかわからずスルーしてしまった」と書いているレビューが多かったのだが、ジオ看板が岩が見える向きにわざわざ置いてあったりして、わかりやすくする工夫はされていると思う。


これです。

これ!


たしかに枕っぽく並んでいる。ジオ好き大興奮。
西伊豆スカイラインとだるま山高原
125ccの原付でも走れる西伊豆スカイラインへ。
富士山もよく見えるし、とんでもなく眺望のよい道なのだが、いかんせん強風なのである。あと、標高が高いので寒い。駐車場にバイクをとめるのも慎重になる風の強さにおびえつつ、戸田駐車場から少しだけ登って景色を眺めたりした。



戸田港の街並みと御浜岬
なんとかスカイラインを走り切って、だるま山高原のレストハウスへ。


よい景色を眺めながら、焼きカレーを食べる。
だるま山高原のキャンプ場を狙っていたのだが、三連休は空きがなく、そこから林道に入って20分ぐらい走った場所にある「沼津 市民の森」のキャンプ場にチェックインする。市民の森キャンプ場は、なんと無料である。写真を撮り忘れたのだが、上級者向けキャンプ場であるためか、すごく静かな人しかいなくて平和なキャンプ場だった。どこからたどり着くにも真っ暗な林道を20分走ることになるけど。
大瀬崎と御浜岬
ぐにょん、と伸びた砂嘴である、大瀬崎と御浜岬へ。こちらも富士山スポットなので例外なくインバウンドの人がきている。熱心なことであるな。


大瀬崎


御浜岬


手前に障害物なく富士山が見える場所は、道路わきであってもだいたいが有料の駐車場になっていたのだが、御浜岬の先っぽまできたらきれいに見ることができた。
下白岩ジオサイト



伊豆がかつて南の海にあったことを示す貴重な地層。今回見た中でもっとも地味ジオサイト。
城山
巨大な「火山の根」である城山。ジオ看板がどこにあるのかわからなかったけど、狩野川記念公園からきれいに見ることができた。



火山だなぁ!
丹那断層公園
断層がめっちゃずれてる様子が観察できる公園。





ずれてるなぁ。






このあと、また125ccでがんばって千葉まで帰る……のはちょっとだるかったので、じつは沼津に泊まり、このままエスカレーターの講演の予定があった名古屋まで、えっちらおっちら走っていくのだが、その話はまた次回に。
