エスカレーターマニアの移動の記録

エスカレーターマニア。船に乗る人。原付で旅をします。

6/23 『片山正通的百科全書』感想と「偏愛」の定義

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片山正通的百科全書 Life is hard... Let's go shopping.|東京オペラシティアートギャラリー

 

美学の研究室にいたときに教授から言われたのは「優れたものの鑑賞眼を得たいときには、そうでもないようなものもたまに見るとよい」ということで、オペラシティの片山正通さんのコレクション展はそういう意味で興味深いものであったなと思うわけです。いや、優れてないといいたいわけではなくてですね、現代アートの展示って、アートの文脈で生きているアート一筋の学芸員の方だったりが明確なコンセプトの元に緻密に構成する……わけなのですが、そういうものばかりを見ていてもよくわからんとなることもあるわけです(ないですか)。自分にしっくり「ハマる」展覧会にあたることもあればそうでないこともあるわけで。以下ははまった例ですが。 

 

 

その点で今回の展示は、インテリアデザイナーの片山正通さんが自分が「買い物」したアートを、ショップを見て回るみたいな感覚で「あ、これほしい〜」みたいに思ってもらえるようにわかりやすく、楽しく配置したもの、ということで、コンセプトが単純明快なんですよね。ほしいか、ほしくないか。そういう意味でいうと、最初に通り抜ける音楽の部屋で「あ、ロックとかお好きなんですね〜」と思ったあたりで、個人的にはべつにほしくはないラインナップ、ちょっと自分の好みとは違う感じの服屋さんに行った気分で「へー、こういうテイストもあるんだねぇ〜」なんて見ていく感じだったんですけれども。

 

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とはいえ、個人でこれを所有しているなんて羨ましすぎる……と歯ぎしりしそうになる松江泰治さんのたくさんのコレクションなどもあり、そういうところでは全力で歯ぎしりするわけですが、そんな感じです。

 


ところで私は、ひとつのものに異常な愛情をかたむけ同じものを集め続けるひとの本、を以前より収集しておりまして、去年の偏愛本ベストは村上隆スーパーフラット・コレクションの図録、だったのですが、そのコレクションと比較をしても、志向するものが真逆だなぁ、と思いました。

 

村上さんのはどちらかというと、好きなわけでもないしこれがなんなのかも正直よく分からないのだが自分のルールに従えば集めざるを得ない、という感じのもので、そういう感じは偏愛道に落ちたものからするとよくわかるのですよね。とはいえアートの世界でそれをやっちゃったらヤバいことになるでしょ(どれだけお金があっても足りない)というのを村上さんはやられてて、それは村上隆にしかできないことに違いないので、その意味でスーパーフラット・コレクションはやべぇーって感じだったのですが。

 

 

私は庶民ですので、アート展では「これほしいか、ほしくないか」っていう基準でまず入ることが多いです。そしてちゃんと「ほしい」って思ったものを買ってる片山さんもすごいなと……1個でもいいからちゃんと作品を買う、ということをしてみたいなという気持ちになったのでした(松江さんのやつマジで羨ましい……歯ぎしりやまず……)。