エスカレーターマニアの移動の記録

エスカレーターマニア。船に乗る人。原付で旅をします。

非常階段ニューヨーク

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ニューヨークの高層ビルはかっこいい。


いまから数行、すごくあたりまえのことしか書かないので、ニューヨークなんてもう出張で行き飽きた、とか○○年前住んでましたとかいう方はぜひ読み飛ばしていただいてかまわない。

とにもかくにも初めて訪れたマンハッタン、建物がみんな超高くて超現役なうえにみんなOldでBeautifulなんだよと、ホストファミリーにその感動を伝えたところ、あなたが言いたいのは建物がみんなCharacterを持ってるっていうことよね、と的確な言葉を教えてもらった。

スタバで相席したおじちゃんには、東京の高層ビルはみんな新しくてニューヨークみたいにユニークじゃないよと言ったところ、東京は戦争で全部焼けちゃったからねとずいぶん昔の話で返された。

戦争関係ないでしょこんな高いビル。とそのとき思ったのだが、あとからガイドブックで勉強したところによれば、ニューヨーク高層ビルの1位と2位のエンパイアステートビルクライスラービルができたのが、それぞれ1931年、1930年。世界高層ビルランキング150の中でもぶっちぎりで古くて、戦前。いやおそれいった、シムシティだと最高土地価格になんないとこんな高いビルは建たない。大変だ。


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いわゆるトップオブザロックから見たニューヨーク。真ん中が戦前生まれのエンパイアステートビル


そんなわけで最初はビルの美しさにすっかり心奪われて歩いたマンハッタンだったが、だんだん気づいたことは、東京のビルも、ありふれてるなんてことは全く無くて、ニューヨークとおなじくらい変わってるよな、ということ。いまや建築界にも世界レベルでの流行り廃りがあるけど、ある一時期までは、世界各地でそれぞれ全く独特なスタンダードがあって、それはけっこう最近までそうだったんだと思う。古けりゃ同じかといったら全くそんなことなくて東京のデビルみたいな建物一切見なかったもの。いや建築に全く詳しくないから様式がどうとかわかんないんだけど。


で、やっとここから本題に入ると、ニューヨーカーは「ありふれてる」と思ってるかもしれないが、じつはニューヨークのビルにかぎりなく固有だと思うものを見つけた。見つけてしまった。



なにかというと、非常階段である。


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立派でデコラティブな近代建築の、真正面に、階段。工事用の足場とかではない。

なぜ建物の真正面にこれをつけちゃうのか。

真ん中の部屋にいるひとはいいが、端の部屋のひとはけっこうな確率で逃げ遅れるのではないか。

2階まで降りれるのはいいが、そこからどうするのか、飛び降りるのか、

あ、はしごになっているのか!!

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これを降ろすのけっこう難しそう。はたして非常時に役に立つのか。私だったら無理。


など、いろいろ突っ込みどころ満載の素敵な非常階段であるが、見つけてしまったからには徐々にそれしか見えなくなってしまったので今日は出し惜しみすることなくはじめてのマンハッタンでの非常階段観察記録をお届けしたい。

スタンダードタイプ

まずはスタンダードといいつつも早速いろんな非常階段がある。


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同調タイプ。


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カラフルタイプ。


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白亜タイプ。これはかっこいい。


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ちょっと幅広タイプ。


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こんな豪華マンションにも非常階段。


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イタリア街にも非常階段。


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中華街にも非常階段。


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徐々に長くなる非常階段。ただいま6stairs。


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7+1stairs。


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今回見つけた中の最長タイプ。8stairsの白亜。美しい。


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スタンダードタイプ、まとめ。

・長ければ長いほどかっこいい。

・カラフルも楽しいが完全に同調する白亜タイプは別格。

・移民街では非常階段もここぞとばかりに自己主張。

・豪華マンションだろうとボロアパートだろうと非常階段は必要。

・ときどきガーデニングや物干し場として使われているけど

 そういうケースが思ったより少ない。ニューヨーカーけっこうまじめ。

 (私のベランダ避難はしごは完全にめだか水槽の下にある。同じ階の住人の皆様すみません。)

ショートタイプ

つづいてショートタイプ。これは3stairs以下のものを指す。

長ければ長いほどいいと書いたばかりだが、ショートタイプはショートタイプでなかなか愛嬌があって素敵ではないだろうか。私は好きだ。

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3stairs


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2.5stairs


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2stairs


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1.5stairs。これはかわいいので3つ並べてみた。


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1stairs。だいぶはしごが長い変則バージョン。ますます降りるの難しそう。


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ショートタイプ まとめ

・非常用というより装飾風。ガーデニング率高し。

・いちばんかわいいのは1.5stairs。

・たかだか2階の高さで超立派な非常階段、でもかっこいいので何も言うまい。


ダブルタイプ

背広のダブルボタンみたいな味わいのあるダブルタイプ非常階段。

端の部屋のひとにもやさしいデラックス版である。


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初老の紳士的落ち着きを感じさせる。


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優しいようでいて実はまんなかが冷たい。40台前半といったところか。


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なんというか、しっちゃかめっちゃか。気をつけたほうがいい手合だ。


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木で見えにくいけど最終的に真ん中で合流するタイプ。

最後のところで渋滞やトラブルに巻き込まれたりしないだろうか。

木にとびうつっちゃったらいいじゃないかという気も少しする。


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ダブルタイプ、まとめ。

・ダブルタイプにはほんとの紳士と気をつけたほうがいいやつがある。

・真中から出てみると落ちる、みたいな。


変則タイプ

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はしごが長い。


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全部はしごで降りるアグレッシブタイプ。


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端の部屋のひとにも優しいバリアフリータイプ。

建物見えないくらいにがっちりしてて安心。

しかしベランダではなくてあくまで非常階段なので私用で使う人がいないのがほんと感心してしまう。


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こちらも丁寧にドアがついてる安心タイプ。


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屋上への導線がツノみたいでかわいい。


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これは観察途中で見つけて思わず唸った複雑な導線。

たぶん2つの全く別の建物だけど、こういうのもありなわけだ。すごい。


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隙間収納的非常階段。


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有名なカーネギーホールを撮った写真にうつりこんでいた非常階段。


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変則タイプ、まとめ

・NYCにはほんとにいろんな非常階段がある、ぜんぜん1週間の休みじゃたりなかった。


総括

・たったいま気づいたことには、ニューヨークのビルは東京のように間に隙間がないから、外付け非常階段がこのように建物の前面にしかつけられないということなのだ。なるほどそのほうがかっこいいからではなかったか。


・そう思うと非常階段 東京もぜひやらなくてはいけない気がした。


・全く同じ名前の本が既に出ているけど、それは非常階段を撮った写真集ではなくて、非常階段から撮った写真集なので、私のように間違えて買わないようにしていただきたい。でも結果素敵な本だったのでいいんだけど。


・帰りの飛行機で、ニューヨークとパリを主人公が行き来する映画を観たのだけど、街並というよりも非常階段があるかないかでニューヨークなのかパリなのかを見分けることができるようになっていることに気がついた。そういう街の知り方というのもいいものだと思う。


・せっかくセールの時期にニューヨークにいて、住宅街の中のかくれおしゃれストリートみたいな場所にガイドブックでたどりついておきながら、掘り出しの品を見つけるよりもかっこいい非常階段を見つけるほうが数倍嬉しかったんだけど、まぁそういうOLの夏休みもいいものだと思う。