『君の名は。』の破綻しない全部盛りと『ユーリ!!! on ICE』の反復ともう一度『シン・ゴジラ』と(言葉にならない『この世界の片隅に』と)

2015年のベスト映画は『はじまりのうた』と『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で、この2つは私にとっての「上京」を確かめなおす、というような大切なものになった*1

2016年はずっと菊地先生の連載を読んでおっかけていたので「映画」というメディアの可能性自体、みたいなことを考えるようなものが多かった*2

のだが、ベスト映画はと言われたら『君の名は。』なんではないかと考えている。

 

新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド

 

君の名は。』の破綻しない全部盛り

君の名は。』が何故そんなにヒットしているのか、話を聞く限りではさっぱりわからない、と思ったまま公開から3ヶ月たって映画館に足を運んで、観終わったときには疑問が氷解していた。

 
男女の入れ替わり
終末観
宇宙
思春期
親子の確執
三角関係
友情
自然礼賛
都会礼賛
片思い
記憶喪失
 
君の名は。』にはいま適当に羅列しただけでこれだけの「メインテーマ」がありそのひとつひとつに「新しい描かれ方」があり、そして全体のストーリー展開、スピード感に破綻がない。たとえば私が映画でほとんどそこにだけいつも注目してみる「都会」への距離感でいうと、田舎の自然と、東京の洗練を同じ筆力と熱量で「どちらも美しくそして儚いもの」として両立させて描く、なんてことはあまり誰もやらないと思う。ふつうそんなことをすると破綻するからだ。がしかし、他の様々な要素や設定と絡み合ってそれがきちんと成立しているから、「田舎は綺麗だ」とか「都会に憧れる」とか、一言では表せない複雑で熱い気持ちが(だれにでも)沸き起こってくる。RADWIMPSのうたとあわせて(最近ラーメン屋でもコンビニでもRADWIMPSが流れてくるだけで泣いてしまうのだがこれはどうしたらいいのだろうか)。
 

シン・ゴジラ』の「なにも起こらなさ」

それに対比して、『シン・ゴジラ』の脚本の上での「なにも起こらなさ」についてまた思いを巡らせていた。言ってみれば『シン・ゴジラ』は「職場あるある」で「多摩あるある」で「エヴァあるある」で、なんなら「ゴジラあるある」でもあるわけだが、その引用元が膨大であるゆえに全編通して新しいことは「なにも起こらない」にも関わらず(例のあのシーンに関して言えば、「空襲あるある」だ)、一言では表せない複雑で熱い気持ちが(結構いろんなひとに)沸き起こる。

 

シン・ゴジラ Blu-ray2枚組

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 (そろそろDVDがでますよみなさん)

 
これは内田樹先生が昔、ジブリ映画を評して書いていたことだが、映画を見終わったあとに「宮崎監督の言いたいことはこういうことだ」とひとことで言えるなら、宮崎監督は映画を作る必要などない。こうしてこうしたのでこうなりました、と起承転結がはっきりしていてそれ以外どうもこうも読みようもない映画(最近だと劇団ひとり監督の『青天の霹靂』がそれに近い)よりも、「ひとことではなにも言えない」映画のほうが熱量が膨大になり、それが直接的な大ヒットにつながってるというのが2016年のおもしろいところだった(アニメに対して一般的な教養レベルが高すぎるという点もあるかもしれない)。

ユーリ!!! on ICE』の反復

ところで、年末に『ユーリ!!! on ICE』をオンラインで一気見していた。方々から聞こえてくる悲鳴に耐えきれなくなったのだ。エピソード1を見た時点で、こんなの見てしまったらひどい「ユーリロス(というかヴィクトルロス)」が来るにきまっていると思って絶望的な気分になったが、結局2晩で全部見通して見終わってしまい、見終わってしまったことが辛すぎて寝込んだ(褒めています)。
ユーリ!!! on ICE』は全12話通して、すべてが同じ話だ。同じスポーツでもバスケやサッカーなどと違って、フィギュアスケートの演目はショートとフリーそれぞれ1シーズンに1曲ずつ、振付も(基本的には)ずっと変わらない。話が長くなれば長くなるほど「ほとんど反復みたいな」ストーリー展開になる長寿漫画はよくあると思うが、『ユーリ!!! on ICE』はたった12話しかないのに、「美味しいところをただひたすら反復する」アニメーションだ。
正直に言って、同じ久保ミツロウ先生の『モテキ!』は、「サブカル青春あるある」の反復が辛すぎて読むことができなかったタイプなのだが、引用元が「シンプルに1本だけ」でかつ正確で精緻、という描き方は、「ごく狭い層にとって半ば傷をえぐられるほどどストレートにきまる」ものなのだな、と再確認して今日も、もう1度シリーズ通して見るべきかやめておいたほうが身のためなのか悩むのであった(こればかり観るようになったら廃人になってしまう)。

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関連(?)

blog.tokyo-esca.com

 

*1:はじまりのうたとバードマンの話はsuumoタウンからの寄稿依頼にかこつけてここで書きました。

suumo.jp

 

*2:『山河ノスタルジア』とか『ひと夏のファンタジア』とか。

山河ノスタルジア [DVD]
 

 

ひと夏のファンタジア