エスカレーターマニアの移動の記録

エスカレーターマニア。船に乗る人。原付で旅をします。

買ってよかった「偏愛本」2016

【お知らせ】 エクスナレッジさんから、エスカレーターしか載ってないすごい本が出ました。『すごいエスカレーター』フルカラー160ページ、ぜひ買ってね。よい本です。→『すごいエスカレーター』


ひとつのものに異常な愛情をかたむけ、同じものを集め続けた「偏愛本」が好きです。

以前には、偏愛エンタメを専門とする書評的コーナーも書かせてもらっていました(あれは楽しかった)

買ってよかった〜、読んでよかった〜まとめの横行する年末、私も便乗して、これは、という偏愛本を、薄いやつから分厚いやつまでまとめておきたいと思います。

ちなみに、本日より私にとって「偏愛本の祭典」であるところのコミケが開催されます。本当はそれを待ってからにしようかとも思ったのですが、むしろ、告知を兼ねることにいたしました。今年出た本もあれば、今更なものもあると思いますがそこは気にせずどうぞ。

 ・LIM
松江泰治 LIM

松江泰治 LIM

 

「墓地こそが都市である」というコピーがついてる墓地写真集。海外の各地の墓地をとらえた写真がひたすら続く。宗教、風習、気候など、その場所のあらゆる条件を反映する墓地。墓地こそが都市、すばらしいコピーである。

・The Fortress in Korea

www.kyobobook.co.kr

ロッテワールドのスパイラルエスカレーターを見に行ったソウルで、いちばん大きな本屋さんの写真集のコーナーをひたすら漁って探した偏愛写真集。あとがきからなにから全部ハングルなのでまったく読めないが、すべての写真が「石垣」なので、これは石垣写真集だな、と思って買ってきた。かろうじてついていた英語のサブタイトルでは「韓国の要塞」となっている。日本で「お城」といえばまず天守閣をイメージすると思うんだけど、この写真集にはそういう城というか建物っぽいものが一切出てこなくて、とにかく「城壁」。それが街並みの中に自然に残っていて、なんとなく「壁」や「道」として使われているのが、おもしろいなぁと思うのだった。

林業機械の写真集9

林業機械を楽しむサークル 「山の居酒屋」

夏コミで出ていた「林業機械の写真集」の新刊が、なんと第9巻で、しかもそれがチェコ林業機械の写真集を集めた本だったので思わずのけぞった。林業機械を見にチェコまで行ったんですか!? と思ったが、そのとき私はといえば、エスカレーターを見に香港まで行った本を出していたので、まったくもっての「お前がいうな」である。

・Doumon

まだ手に入れていないのでやや反則ではあるが、C90の戦利品自慢で見せられて身悶えした素敵本。この表紙に「してやられた!」と思ったが、中身も大充実の1冊で、30日には絶対に手に入れることを心に誓っている。

・高層画報

私が「鉄道・メカミリ」ジャンルの中でもっともエスカレーターに親和性が高いと勝手に思っているサークル、超高層ビルを愛でる会さん。何が近いかというと、ノスタルジーの方角に拠らず、文明の進歩と都市の発達を愛しているところが、である。そしてこちらのサークルはめちゃラグジュアリーな方々が揃っているので、誌面デザインもめちゃラグジュアリーなのである。羨ましい。

 ・Stefan Olah: Sechsundzwanzig Wiener Tankstellen
Stefan Olah: Sechsundzwanzig Wiener Tankstellen

Stefan Olah: Sechsundzwanzig Wiener Tankstellen

 

 東京都写真美術館の直ぐ近くにある、海外出版社を特集する本屋さん「POST」で今日手に入れた本。オランダの出版社「ROMA Publications」の本で、タイトルがさっぱりよくわからなかったのだが明らかにあやしい表紙を見て手に取ると、全ページ、ガソリンスタンドの写真集であった。中身の文章は英語で、「なぜガソリンスタンドを撮るのか?なぜならそこにあったからだ。」とか書いてあってすごく期待が持てる感じ。 

 ・叢
叢 小田康平の多肉植物

叢 小田康平の多肉植物

  • 作者: 小田康平,清水穣,仲将晴,久保田光一
  • 出版社/メーカー: 現代企画室
  • 発売日: 2016/02/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

小田康平さんの手による多肉植物を集めた写真集。本来、Casa BRUTUSとかで紹介されちゃう系の本であるが、見開きに、正面真横からのアングルと斜め上からの寄りのアングル、2枚ずつセットで並ぶ構成に唸る。美しい。私もCasa BRUTUSで紹介されそうなエスカレーターの本が作りたい。

・美容院鑑賞 杉並区編

そういう意味でいうと、こちらはもうこのままCasa BRUTUSで紹介できちゃうでしょう、という美容院の写真集。可愛いし、味わい深いし、ちょっとおしゃれ。ちょっと嫉妬。 

・地図趣味。
地図趣味。

地図趣味。

 

杉浦さんによる、珠玉の地図コレクションと、「食べられる地図」レシピなどが載っている。偏愛はともすると、きっとわからないでしょうが、わからないということをおもしろがってください、というふうに丸投げしてしまうことがままあるなかで、至極丁寧に魅力を語るスタイルがすばらしい。見習いたい。 

偏愛大賞

村上隆スーパーフラット・コレクション
村上隆のスーパーフラット・コレクション

村上隆のスーパーフラット・コレクション

 

今年行った展覧会のいちばんよかったやつはと言われても、そもそもほんとに興味のあるやつにすこーし行ったぐらいでなにも言えないのですが、偏愛本好きとしては、これをあげないわけにはいかんのでは、という1冊。展覧会に間に合わなかった図録である。予約した時はたしか3,000円ぐらいだったのに、送付予定と言われていた月をさらにとうにすぎてすっかり忘れた頃にやってきたら、定価が1万円になっておった。ものすごい分厚さと金色の表紙に気圧されるが、まず物量でこんな展覧会見たことあるか?だったあれがぎゅぎゅっと凝縮されており、まったくしたことのないアート体験ができると同時に、途方もない蒐集の記録なのであった。

なぜあれがなくてこれが入っているのだ?と思われる向きもあるかと思いますが、単に私が忘れっぽかったりうっかりしがちなために入手してなかったりする、ということもあるのですが、この偏愛10冊を選ぶにあたって気をつけたのは、集めることに特に意味なんてない。ということと、でもそこに「審美眼」みたいなものが生まれている。ということ、その2点である。それは、ただ単に私がそうだから、ということである。全部を集めているのでも、なんとなく集めているわけでもないが、あらかじめ決められた体系に沿っているのでもない。それが「愛」だと言ってしまえば簡単だが、もはや愛とかそういうわけでもないような気もする。蒐集癖とは厄介なものなのである。