TOKYO ESCALATOR BLOG

エスカレーター専門サイト「東京エスカレーター」の旅行記です。なかの人は田村美葉です。

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別冊 東京エスカレーター 07

 

わたしはずっとひとりでさみしかった『探偵物語(映画)』感想

あまちゃん鈴鹿ひろ美の謎を探るにあたり、シーンの類似がある、とほかのあまちゃん評で書かれていた『探偵物語』(映画のほう)を参照することに。結果として、類似してると指摘のあったシーンは「言うほど似てなかった」のだけど、結構興味深い映画だったのでちょっと感想を書いておく。

 

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1983年の東急東横線

薬師丸ひろ子演じるヒロイン、新井直美は、田園調布の豪邸で家政婦の長谷沼さんと二人暮しの女子大生。数日後、アメリカに暮らしているらしき父親の元に移住することが決まっているが、なんとなく処女を捨てたい衝動に駆られて無茶な行動をしたりするため、見張り&ボディーガードとして探偵が雇われた。その数日間のうちに殺人事件があったりすったもんだする、そういうお話。

なのだが、田園調布東横線、大学、団地などなど、ロケ地がリアルな1983年の東京なのでまず画面の端々に目を奪われてしまう。田園調布駅前での追いかけっこからの、東横線の自動券売機、それに人力の改札。とりわけ、東横線愛する人にはぜひ見ていただきたい。

参考:我が心の松田優作-優作映画ロケ地ギャラリー

 

自立するヒロインのアンバランスさ

ヒロインの直美は、ろくでもない男にひっかかる。

彼女いるくせに「朝ごはんも一緒に食べない?」なんて誘っちゃう永井先輩も、最初「迷惑はかけられない」と言ってたはずの直美の家で堂々と元妻とセックスにおよぶ探偵の辻山も、本当にろくでもない。

なんだけど、直美はわりとへこたれないキャラである。

彼女いるのわかってるのに永井先輩の住所調べて誤解を解くために家まで突撃しようとするし、辻山のセックス発覚の直後には、「じゃあ自分も」ってクラブでナンパ待ちして初対面の男とラブホテルまで行っちゃう。

そのへこたれない度胸の強さが、組長宅に乗り込んだりして「ヤクザの殺人事件の冤罪」なんていうやっかいな事件をあっさり解決してしまうのだから、いかにも赤川次郎作品にありそうな「能天気で底抜けに明るく度胸のいいヒロイン」ってことで、アイドル映画の題材に選ばれた、と考えるのが筋なような気がするのだけど、この映画は最後に薬師丸ひろ子にこう言わせるのだ。

 

「わたしは、ずっとひとりでさみしかった」と。

 

なぜなら、薬師丸ひろ子が最後にそうでも言わないと落としどころがないような、「微妙に揺れる女子大生の恋心」や、「大人になりたくて、なれない歯がゆさ」を、そんなことを示唆するセリフ一切ないのに、目線だけで演じ切っていて、それが「底抜けに度胸のある女子大生」という設定より、心にひっかかってしまうからだ。

 

わたしは、ずっとひとりで、さみしかった。最初「おいおい長谷沼さん無視かよ!」と思ったこのセリフも、「ひとり」を「恋人がいない」と定義し直すと大変しっくりくる。売春して身を持ち崩す永井先輩の彼女や、ヤクザと関係する探偵の元妻のほうこそ、男に依存して生きてるバランスの悪い女であるはずなのに、なぜかこの映画では、ひとりでヤクザの組長の家に乗り込んでいけるほど自立したヒロインのほうが、男と身体の関係がないということだけでどうにもバランスを欠いてあやうい存在感を出す。薬師丸の演技力が飛び抜けているせい、それだけで。

1983年、という時代と、女子大生という年頃の微妙さが、奇跡的にうまく切り取られた傑作であった。