TOKYO ESCALATOR BLOG

エスカレーター専門サイト「東京エスカレーター」の旅行記です。なかの人は田村美葉です。

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別冊 東京エスカレーター 07

 

狂気は狂気のままで置いておけ。『タクシードライバー』感想

 タクシードライバーを主人公にしがちな監督といえばリュック・ベッソンがいて、『TAXi』でも『フィフス・エレメント』でも『トランスポーター』(タクシーではないが)でも、映画でタクシーといえば超高速でぶっ飛ばしたり空飛んだりするもんだ、という頭があったので、タクシー映画の元祖ともいうべき本作を観たときにはあまりのスカッとしなさに衝撃を受けた。

 

タクシードライバーの主人公はベトナム帰還兵で不眠症。女に振られてヤケを起こし、なぜか銃にのめり込んでガンマニアとなり、余計な正義を振りかざしながらニューヨークの街をうろつく。その「正義」は意外な形で結末を迎えるのだが、最後まで胸にわく感情は、「ああ、よせばいいのに……」である。まったくもってスカッとしない。

 
このロバート・デニーロ演じる主人公が、ずっとメンタル弱ってる役なので、メンタル弱ってるあるあるとして見ていると参考になる。些細なことにイライラする、うまくいかなかったことに過剰に落ち込む、ひとつのモノに異常な執着をみせる、いきなり大胆な行動に出る……「孤独」からくる「狂気」って、はたから見てるとこんなに滑稽で、いじらしくて、バカバカしいものなんだな、と、清々しい気持ちにさえなる。
 
自分の世界を変えてやろうともがく主人公に、先輩のアドバイスは「そんな深く考えるなよ」だ。そんな深く考えるな?それができたらこんなにジタバタしないさ。その一点でのみ、ただ深く主人公とシンクロするならば、絶望を微妙に回避する微妙な結末も、希望ととらえることもできなくはない。